「結婚しない男」を個人の心理で説明するのは、なぜ外れるのか

「結婚しない男の本音15選」「結婚しない男性の心理と理由22選」——検索すると、こうした特集が並びます。どれも、男性にインタビューして本音を聞き出し、「結婚しないのは性格がこうだから」と説明する形式です。

でも、この説明の仕方には無理があります。未婚率の推移が、個人の心理では説明できない形で動いているからです。

まず数字を見る

国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査(2021年)によると、未婚男性の72.2%に交際相手がいません。そして33.5%は交際自体を望んでいません

3人に1人が「交際を望まない」と回答している。この数字は「結婚したくない男が増えた」という説明と矛盾しません。しかし、個人の心理の変化だけで、なぜここまでの規模になったのかを説明できるでしょうか。

心理の説明が外れる理由

「結婚しない男」の特集記事は、原因を個人の内側に置きます。「自由を優先したい」「金銭的な負担が嫌」「現状に満足している」——いずれも本当でしょう。

でも、それらの本音は変化の結果であって、変化の原因ではありません。原因はもっと手前の、接続の仕組みのほうにあります。

戦前の日本では、見合い結婚が約7割でした。仲介者が地縁・職縁の内側で候補を持ち込み、当事者は探索も選別もほとんどしない。この「割り当て」の仕組みが、1960年代末に恋愛結婚と逆転しました。以降、パートナーの成立は市場になり、探索と選別のコストはすべて当事者に移りました。

市場になった結果、選好は集中し、評価の分布は偏ります。そして市場から降りる人——交際を望まないと答える3人に1人——が出てきます。個人の性格が変わったから降りたのではなく、降りることが合理的になる構造になったから降りた、と読む方がデータと合っています。

「ずるい」という評定が止めるもの

「結婚しない男はずるい」という論調もよく見ます。女性100人へのアンケートで「ずるい」と感じる理由を集める、という形式の記事です。

この評定は、双方が同じ市場で選び合っている前提に立っています。でも、未婚男性の3人に1人は交際自体を望んでいません。市場に参加していない人に「ずるい」と言っても、話は始まりません。

「ずるい」と評定することは、降りた人を市場に戻そうとする圧力ですが、構造が変わらない限り戻りません。むしろ、降りる選択が合理的になる構造——接続のコストが当事者に全額乗る市場——のほうを問題にすべきです。

着地:個人の努力論でも、あきらめ論でもなく

この構造を読むと、「もっと頑張れば結婚できる」という努力論と、「もうダメだ」というあきらめ論の両方が外れていることが分かります。

努力論は、市場に降りる選択が合理的になる構造を無視します。あきらめ論は、構造が変われば選択肢が変わる可能性を捨てます。

個人にできることは、構造を把握した上で、自分がどこにいるかを決めることです。市場に残って探索を続けるのも、降りて一人で成立させるのも、どちらも合理的な選択です。このサイトの実務セクションは、後者——降りた先でどう一人で成立させるか——を扱っています。

**「結婚しない男」を個人の心理で説明する記事は、当たっていそうでいて、実は構造の変化を見えなくしています。**数字を並べれば並べるほど、原因は個人ではなく、60年で入れ替わった接続の仕組みにあると見えてきます。

よくある質問

未婚の男性が増えているのはなぜですか?
「結婚したくない男性が増えたから」という説明は、本人の意識を聞いた調査と矛盾します。出生動向基本調査では、未婚男性の33.5%が交際自体を望んでいません。個人の意識が先に変わったのではなく、接続が成立しにくくなった結果として、選択肢の外に出ていく人が増えた、と読む方がデータに合っています。
「結婚しない男」の記事は何が問題ですか?
男性の本音や性格で説明する形式がほとんどです。しかし未婚率の推移は個人の属性では説明しきれず、むしろ60年で接続の仕組みが「割り当て」から「市場」に変わったことの帰結に見えます。個人の心理に原因を求める説明は、構造の変化を見えなくします。
結婚しない男性は「ずるい」のでしょうか?
「ずるい」という評定は、双方が同じ市場で選び合う前提に立っています。しかし未婚男性の3人に1人は交際自体を望んでいません。市場から降りた人に「ずるい」と評定しても、話は前に進みません。むしろ降りる選択が合理的になる構造のほうに目を向けるべきです。
個人ではどうすればいいのですか?
このサイトは「個人の努力で勝てる」とは言いません。構造を個人の努力で打ち消すことはできませんが、構造を把握した上で自分がどこにいるかを決めることはできます。降りるなら降りるで、それも合理的な選択です。