72.2%と33.5% — データが示しているのは個人の失敗ではない
議論を感想でやると平行線になるので、数字から始めます。国立社会保障・人口問題研究所の**第16回出生動向基本調査(2021年)**です。日本でこの領域を扱う一次統計としては、最も参照される調査です。
3つの数字
| 項目 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 交際している異性がいない(未婚者) | 72.2% | 64.2% |
| 交際を望まない(未婚者) | 33.5% | 34.1% |
| 交際経験なし(20歳以上・未婚) | 約40% | 約30% |
1つ目だけを見ると、「出会いがない」「厳しい時代だ」という話になります。よく引用されるのもここです。
2つ目を並べた瞬間に、話が変わります。
72.2%と33.5%を同時に見る
交際相手がいない未婚男性が72.2%。そして交際を望まない未婚男性が33.5%。
つまり相手がいない人のかなりの部分が、求めた結果として得られていないのではなく、求めていない。おおよそ3人に1人です。女性も34.1%でほぼ同じ水準です。
ここで、世間で使われている記述を当ててみます。
「あなたは恋愛に失敗している」
この文は、3人に1人を失敗者として数え間違えます。 望んでいない人は失敗していません。参加していないだけです。試験を受けていない人を不合格と書いたら、それは記述の誤りです。
そして3分の1というのは、少数の例外ではありません。これだけの規模で選択が変わっているなら、動いたのは個人の能力ではなく規範の側だと読むのが自然です。
「望まない」を負け惜しみにしない
2つの誤読を先に潰しておきます。
誤読1: 望まないと言っているのは、諦めた人が強がっているだけだ。
そう解釈したくなりますが、この調査は男女でほぼ同じ数字を出しています(33.5%と34.1%)。もし「モテない男の負け惜しみ」なら、男女で対称になる理由がありません。同じ規模で両側に起きている現象を、片側の心理で説明することはできません。
誤読2: だから若者は劣化した。
これも当たりません。ある選択の分布が変わったとき、原因を人の質に求めるのは説明として一番安易な着地です。60年で接続の仕組みが割り当てから市場に変わったという制度の変化が先にあり、その下で選択が変わっている。順序としてはそちらのほうが無理がありません。
交際経験なし約40%が示すもの
3つ目の数字を見ます。20歳以上の未婚男性で交際経験がないのが約40%。
市場の性質として、これは予想どおりです。市場は選好を通すので、選好が集中します。 集中した先に入らなかった参加者は、経験そのものを積みません。そして経験がないと次の試行も不利になる。
割り当て制はこの累積を起こしませんでした。仲介者が持ち込むので、選好の集中と無関係に接続が発生していた。分布の形が違うということです。
だからこの40%は、40%の人に欠陥があることを示しているのではなく、市場という方式が生む分布の形を示しています。
何が言えて、何が言えないか
正直に線を引きます。
言えること。 交際相手がいない未婚者は多数派である。3人に1人は求めていない。交際経験のない層が相当規模で存在する。これらは調査に基づく事実です。
言えないこと。 これがマッチングアプリのせいだ、女性の側が変わったからだ、経済のせいだ、という単一原因の断定。この調査はそこまで示しません。相関を語れる材料はありますが、因果を1本に絞れる根拠はないので、そう書きません。
このサイトで因果として主張しているのは、制度の移行と代替されなかった機能という構造的な説明だけです。それ以上を数字に言わせません。
使い方
この数字の実用的な意味はひとつです。
自分の状況を説明するときに、間違った物差しを使わなくて済む。
「うまくやれていない」と感じているとき、比較先として想定しているのはたいてい存在しない標準です。実際の分布は上のとおりで、多数派は交際相手がおらず、3分の1は求めていない。
その上で、それでも求めるならデート代論争のような具体的な場面の話になり、求めないなら降りた先に何を置くかの話になります。どちらを選んでも、失敗ではありません。
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出典: 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(2021年)」結果の概要および報告書。交際状況・交際意欲に関する集計。
よくある質問
- 交際相手がいない未婚者はどれくらいいますか?
- 2021年の第16回出生動向基本調査では、未婚男性の72.2%、未婚女性の64.2%が交際している異性はいないと回答しています。過去の調査と比べて増加傾向にあります。
- 交際を望んでいない人はどれくらいいますか?
- 未婚男性の33.5%、未婚女性の34.1%が交際を望まないと回答しています。およそ3人に1人が、相手がいないだけでなく求めてもいない状態です。
- 交際経験がない人の割合は?
- 同調査では、20歳以上の未婚者のうち交際経験がないのは男性で約40%、女性で約30%とされています。18歳以上でみると男女とも約6割に交際経験があります。
- この数字は個人の努力不足を示しているのですか?
- 示していません。3分の1が交際を望まないと答えている状況で「失敗している」という記述を当てると、望んでいない人まで失敗者に数えることになります。動いたのは個人の能力ではなく規範の側です。
- データはどこで確認できますか?
- 国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査(2021年)で公開されています。独身者調査と夫婦調査の報告書および結果の概要がPDFで入手できます。