マッチングアプリの検索を週20時間使っていた話 — 安いのは月額だけ
マッチングアプリの紹介記事や広告は、料金を「月額3,000円台。ランチ1回分」と書きます。それは正しい。月額はランチ1回分です。
ただ、自分がいちばん多く払っていたのは料金ではなかった。検索と、待ちと、解釈に消える時間です。数えたら、週20時間くらい使っていた時期がありました。
この記事は、その時間を「頑張り」でも「無駄」でもなく、コストとして数える話をします。
月額の外にあるコスト
マッチングアプリで1人の相手に到達するまでに、何をするか並べてみます。
検索。 条件を絞ってプロフィールを流し読みする。1時間で数十人を「見る」ことができて、それがかえって止めどころをなくす。
いいねを送る。 検索のあと。送れる枚数に上限があるので、「誰に送るか」の選別がまた発生する。
待つ。 返信が来るまでの時間。ここでは何も進まないのに、スマホから離れられない。
解釈する。 既読がついて返信が来ない。短文で返ってきた。これはどういう意味か。相手の意図を読む作業に時間が吸われる。
これを全部合計しても、金は入ってきません。時間と神経だけが積み上がります。
週20時間を月にすると
週20時間を4週で80時間。時給1,500円で換算すると月12万円です。月額3,000円の40倍。
この換算は「検索の時間を労働だと見なすなら」という前提の話で、数値は換算の結果にすぎません。それでも、料金だけを基準にした「安い」の判断が、全体の一部しか見ていないことは分かるはずです。
| 費目 | 内容 | 月あたり |
|---|---|---|
| 金 | 月額料金 | 3,000円前後 |
| 時間 | 検索・いいね・待ち・解釈 | 80時間(週20時間の例) |
| 神経 | 既読の解釈・不成立の処理 | 毎日 |
アプリは既に「成立の場」になった
ここで誤解を先に外しておきます。「アプリでは出会えない」とは書きません。
こども家庭庁が2024年8月に公表した調査では、直近5年以内に結婚した既婚者2,000人に「配偶者とどう出会ったか」を聞いていて、マッチングアプリが25.1%で最多でした(職場や仕事関係20.5%、学校9.9%)。既婚者の4人に1人がアプリ経由です。
つまりアプリは、もはや主要な出会いの場です。成立している人も相当数いる。それは認めた上で、論点は別のところにあります。
なぜ時間が数えられないのか
探索コストは料金表に載らないからです。
月額3,000円は比較の単位になります。「ランチ1回分」という言い方は、この単位でしか成立していません。対して時間は、「手間」「気疲れ」として感じられるだけで、数字にならない。数字にならないものは比較されず、比較されないから、「安い」という判断だけが残ります。
そして月額課金のサービスは探索が続くほど収益が出る構造です。探索コストを短縮する設計を取る動機が、構造的に弱い。悪意の話ではなく、収益の向きの話です。
誤読を潰す
「時間をかけているのは努力だ。努力は正しい。」 努力の問題としては書いていません。1件の成立に対して80時間かかる構造で、しかも月額の安さだけが可視化されている。見えていないのは怠惰ではなく、構造です。
「アプリが悪い」 書きません。上の25.1%が示すように、アプリは機能している場です。有効な手段であることと、その探索コストが誰にも数えられていないことは、別の話です。
何が言えて、何が言えないか
言えること。 アプリは既婚者の25.1%を出した主要な出会い経路である。探索コスト(時間・神経)は月額の外にあり、料金表に出てこない。週20時間の例で試算すれば月80時間になる。
言えないこと。 アプリのせいで恋愛が成立しない、という単一原因の断定。25.1%は既婚者の調査であって、未婚者の探索コストを直接測ったものではありません。週20時間は自分の例であって、全体の統計ではありません。
数えることから始まる
処方を書きます。降りる判断も、続ける判断も、数えてからにします。
- 月に何時間使ったか数える(スマホのスクリーンタイムで出ます)
- 何件マッチして、何件会って、何件交際に至ったかを並べる
- 時間を成立数で割る
これで、そのアプリが「ランチ1回分の趣味」なのか「時給換算で12万円の支出」なのかが、感情ではなく数字で出ます。
そして期限を先に決めることです。3ヶ月で見直す。月に会える件数を決めてから始める。サービス側の設計は探索の継続を前提にしているので、終わりの条件は自分で持ち込まないと存在しません。
それでも合わないなら、降りるのは合理的な選択です。降りた先に置くものは、このサイトが実務セクションで書いています。
結論
月額はランチ1回分です。そして検索の時間は、ランチ1回分では済みません。
安さは、月額の外にあるコストを見えなくします。そのコストを数えたときに、続ける判断も降りる判断も、初めて正確になります。数えていない間だけ、安さが正解に見えるのです。
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出典: こども家庭庁「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」ウェブアンケート調査結果(2024年8月公表・速報)。既婚者(直近5年以内に結婚)2,000人への「配偶者との出会いのきっかけ」で、マッチングアプリ25.1%・職場や仕事関係20.5%・学校9.9%。国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(2021年)」。時間・金額の試算は記事内の前提を明示した計算であり、統計ではありません。
よくある質問
- マッチングアプリの料金はいくらかかりますか?
- 月額で3,000円前後のサービスが中心です。ただしこの記事の論点は料金ではなく、料金の外にある探索コストです。月額は「入場料」であって、実際に消えるのは検索・待ち・解釈の時間と神経です。
- 週20時間は多いのですか、少ないのですか?
- 目安です。週20時間を4週で月80時間、時給1,500円換算で12万円という試算は、自分の例を前提にした計算です。全体の統計ではありません。多いか少ないかは、時間を成立数で割ってみないと分かりません。
- アプリでは出会えないのですか?
- そんなことはありません。こども家庭庁の調査では、直近5年以内に結婚した既婚者の25.1%がマッチングアプリ経由で最多です。有効な出会いの場であることは認めた上で、その探索コストが数えられていない点を扱っています。
- 探索コストをどうやって減らせばいいですか?
- 先に数えることです。月の使用時間、マッチ件数、成立件数を並べ、時間を成立数で割ります。次に期限を先に決めます。3ヶ月で見直すなど。サービス側の設計は探索の継続を前提にしているので、終わりの条件は自分で持ち込む必要があります。
- なぜ時間の話はほとんど出てこないのですか?
- 探索コストが料金表に載らないからです。月額は比較の単位になりますが、時間は数字にならず、比較も最適化もされません。しかも月額課金は探索が続くほど収益が出る構造なので、探索を短縮する動機が構造的に弱いです。