サブスクの利害 — 成立しないほうが儲かる構造をどう読むか
前提として、見合いから市場への移行で代替されなかった機能があります。自分では選び合わない人同士を接続するという働きです。
その空白を、公的な制度ではなく民間が埋めました。その事業の収益がどこに連動しているかを見ます。
報酬の発生地点が逆になった
見合いの仲介者は、縁談が成立したときに報酬を受けていました。 成立させるほど得をする。
いまの主流であるマッチングアプリは、多くが月額のサブスクリプション課金です。収益は利用期間の長さに比例します。
この差は、言い換えるとこうなります。
| 報酬が発生する地点 | 最大化されるもの | |
|---|---|---|
| 見合いの仲介者 | 成立時 | 成立の件数 |
| 月額課金のサービス | 在籍している間 | 探索が続く期間 |
同じ「橋渡し」でありながら、インセンティブの向きが逆です。
これは陰謀論ではない
先に線を引きます。「わざと成立させないようにしている」という主張はしません。 その根拠がありません。
指摘しているのは意図ではなく構造です。ある事業の収益が探索の継続に連動しているなら、その事業が「探索の終了」を最大化する設計を選ぶ理由は、構造的に弱い。妨害しているのではなく、強く後押しする動機がないという話です。
この違いは重要です。陰謀として語ると反証しやすい主張になり、しかも敵を作って終わります。インセンティブとして語ると、反証しにくく、そして対処の方法が出てきます。
成果報酬型なら揃う
向きが揃うモデルもあります。結婚相談所の成婚料がその型です。成立時に報酬が発生するので、見合いの仲介者と同じ向きになります。
ただしこちらにも代償があります。成果報酬は初期費用が高くなりやすく、参加できる層が絞られる。安く広く開くならサブスクリプションのほうが合理的で、だから主流になった。
つまりどちらが善でどちらが悪という話ではありません。 収益モデルによって最適化される対象が変わる、という話です。そしていま多数の人が使っているのは、探索の継続に収益が連動している型のほうだということ。
利用者側で何が起きるか
構造の帰結として、利用者に何が起きるかを具体的に書きます。
選別の回数が多い。 写真、プロフィール、初回メッセージ、初対面。段階ごとに選別があり、不成立が積み上がります。対面の出会いなら1回で済む選別が、ここでは複数回発生する。消耗が構造的に大きくなるのはこのためです。
終わりの条件が向こう側にある。 目標が「成立」ではなく「継続」に置かれた環境では、いつ止めるかの基準が自分の手元にありません。
在籍が可視化されない。 相手がどれだけ長く在籍しているか、どれだけの相手と並行しているかは通常わかりません。市場の情報の非対称性がそのまま残っています。
対処は1つだけある
期限を先に決めることです。
サービス側の設計が探索の継続を前提にしているなら、終わりの条件は自分で持ち込まないと存在しません。 3ヶ月で見直す、10回会って考える、月にかける額の上限を決める。何でもいいのですが、着手する前に置いておく必要があります。
後から決めようとすると、判断の材料が「もう少し続ければ」という設計側の設計に寄ります。悪意ではなく、そう作られているからです。
このサイトが広告を扱わない理由
整合性の話なので書いておきます。
このサイトはマッチングアプリの広告を扱いません。 上のような批評を書いた直後に同じものを売るのは、読者に対して逆の行動を勧めることになります。
収益はソロ活側(一人旅の宿など)で取ります。そちらは記事の主張と行動が一致するので。
関連記事
- 見合いから市場へ — 代替されなかった機能
- 72.2%と33.5% — データが示していること
- 降りるのは合理的な選択か
- 恋愛に疲れたのは怠けているからではない — 消耗を数える
注記: 収益モデルの一般的な形について書いています。個別のサービスの課金体系や運用方針は各社で異なり、変更もされるため、利用の前に公式の料金ページと規約を確認してください。
よくある質問
- マッチングアプリはわざと成立させないようにしているのですか?
- そう主張する根拠はありません。ここで指摘しているのは意図ではなく、収益がどこに連動しているかという構造です。月額課金は利用期間に比例するので、成立して離脱することは収益の終わりにあたります。向きが弱いという話であって、妨害しているという話ではありません。
- 見合いの仲介者とは何が違うのですか?
- 報酬の発生地点が違います。仲介者は縁談が成立したときに報酬を受けていたので、成立させるほど得をしました。月額課金は探索が続くほど得をします。同じ「橋渡し」でも、インセンティブの向きが逆です。
- 成果報酬型のサービスなら問題ないのですか?
- 向きは揃います。結婚相談所の成婚料はこの型です。ただし成果報酬は初期費用が高くなりがちで、参加できる層が絞られます。どちらが優れているという話ではなく、収益モデルによって最適化される対象が変わるということです。
- 利用者はどう対処すればいいのですか?
- 期限を先に決めることです。サービス側の設計は探索の継続を前提にしているので、終わりの条件を自分で持っていないと、判断の基準が向こう側の設計に委ねられます。3ヶ月で見直す、といった区切りを最初に置くのが実務的です。
- このサイトはマッチングアプリの広告を扱っていますか?
- 扱っていません。恋愛の消耗を数えることを勧めた直後にアプリを売るのは、記事の主張と逆の行動を勧めることになるためです。収益より整合性を取っています。